- 結莉夏
- 「……あ……!?」
- その途端、何かにつまずいたのだろう。
先輩の体が、前へと揺れる。
- トキヤ
- 「っと、先輩っ!」
- 反射的に腰を上げながら、先輩を支えようと両腕を伸ばす。
- だけど、中途半端な姿勢では先輩をしっかりと受け止めることが出来ずに。
- 巻き込まれるように、俺も体勢を崩してしまう。
- トキヤ
- 「――っ!」
- 視界の端に見えたのは、保健室のベッド。
- 床に転んでは先輩が怪我するかもしれないと、ベッドに体を傾けて――
- ぼふっ!
- トキヤ
- 「だ、大丈夫ですか? 先輩……」
- 感じたのは柔らかい衝撃。
- どうやら、咄嗟にベッドの方に倒せたようだと、ホッと息を漏らしたのも束の間。
- 気が付くと、先輩の顔が近くにあった。
- というか、ベッドに押し倒す体勢になっていた。
- 結莉夏
- 「す、すみません。助かりま、し……た……」
- ゆっくりとまぶたを持ち上げた先輩と目が合う。
- 不意に、沈黙が訪れた。
- トキヤ
- 「えっと……」
- 突然の出来事に、頭が上手く回らない。
- ど、どうすれば、いいんだろう……
- 結莉夏
- 「あ、っ……そ、その、ト、トキヤくん……!」
- とても恥ずかしそうに顔を真っ赤にした先輩。
- 結莉夏
- 「……あ、あ、あの、その……」
- 言葉が上手く出てこないのはよく分かる。
俺も同じようなものだったから。
- トキヤ
- 「結莉夏先輩……」
- だから、ようやく紡げたのは先輩を呼ぶ声だけで。
- 結莉夏
- 「ぇ……? ぁ……」
- 結莉夏
- 「…………はい」
- それを聞いた先輩が、静かに目を閉じる――
- って、ええええええっ!?