- 叶
- 「トキヤくんったら、私がなにを着ても、似合うとしか言わないんだから」
- トキヤ
- 「ごめん。でも本当に似合いそうなんだから仕方ないよ」
- 叶
- 「本当に?」
- トキヤ
- 「やけに念を押してくるなぁ。本当だよ」
- 叶
- 「……じゃあ、最後にこれを着たら、どれが一番かわいかったかを聞くからね?」
- トキヤ
- 「えっ」
- 叶
- 「それで、トキヤくんが一番かわいいって思ったのを買って帰ることにきーめたっ」
- トキヤ
- 「あ、い、いや、そういうルール!?」
- 叶
- 「ふふっ。着替えてる間に考えておいてね」
- そう言って、叶さんは試着室の中に消えてしまった。
どうしようか……
- 最初に着た服もかわいかったし。その次だって……ぬぬぬ。
- 叶
- 「トキヤくん、着替え終わったよ。ふふふっ、最後の一着のお披露目でーす♪」
- 明るく面白がるように言いながら、叶さんが更衣室のカーテンを開けた。
- トキヤ
- 「えっ、ちょっと早い。まだこっちは心が決まってない!」
- 叶
- 「ふふーん。だめだめ。ちゃんと決めてもらうからね?」
- 叶さんの美しさを最高に彩る一枚を決められないまま、
再び天使が俺の目の前に舞い降りてしまった。
- どうする、どうするんだ。優柔不断はよくないよな。
- 叶
- 「これいいかも♪ 生地も柔らかくて着心地もいいし。
ねぇねぇ、どうかな? これっ」
- そんな俺の混乱をよそに、上機嫌な叶さんがくるっと回ったその瞬間――