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- ◆ 由香里
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「へえ、これはこれは」
- ◆ 始
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「おおうっ」
- ◆ 由香里
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「ほほう……これはなかなか触り甲斐がある……」
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何故か俺の背後から、由香里が
さわさわと体を触ってくる。
- ◆ 由香里
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あまりのくすぐったさに、思わず声が出てしまった。
- ◆ 由香里
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こ、これはこれで未知の経験なわけで、
ドキドキしてしまう。
- ◆ 由香里
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「うむ……」
- ◆ 由香里
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「……なるほどね。お兄さんは意外に下心が
たっぷりな人のようだ」
- ◆ 始
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「…………え?」
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な、なにを急に言い出すんだ、この子は。
- ◆ 鈴奈
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「ど、どういうことですか? 何してるんですかっ!?」
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鈴奈さんは恥ずかしそうに非難の声をあげる。
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そうだよな。目を閉じていたら、何の話をしているか
分からないよな。
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目を開けていても、多分ツッコミ入れられただろうけど。
- ◆ 由香里
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「何かスポーツをやって付いた筋肉じゃないね、これは。
そして、トレーナーが計画的に作ったものでもない」
- ◆ 由香里
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「腹筋に対して背筋のバランスが悪い。
典型的な素人が筋トレをした結果だ」
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確かめるように掌を滑らせながら、由香里が
ひとつひとつ細かい分析を挟む。
- ◆ 由香里
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「健康や体調管理のため、なんて言うにはまだ少し若い」
- ◆ 由香里
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「男女問わず体型を維持、あるいは改善するのは
誰かに見られることを意識しているため」
- ◆ 由香里
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「つまり、それなりの下心があるから、というわけだね」
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ちょ、ちょっと触っただけで、そこまで
言い切れるものなのか?
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しかも、間違っていない。
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モテたくて努力した結果が、この体なわけだから。
- ◆ 始
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「な、なんで、そこまで……」
- ◆ 由香里
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「なんて、もっともらしいことを言ったけど、下心のない
男子学生なんてほとんどいないからね」
- ◆ 由香里
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「後は適当にそれっぽいことを言っていれば、それなりに
当たる。本で読んだ悪い占い師のテクニックだよ」
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そう言って、由香里は愉快そうに唇の端で笑う。
- ◆ 始
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「な、なんだ。そういうことだったのか」
- ◆ 由香里
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「ちょっとびっくりさせてしまったかな?」
- ◆ 由香里
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「でも、聞きかじりの知識でも、ビックリさせるのには
十分だろう?」
- ◆ 由香里
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「特にどこかを痛めていたりはしないみたいだ。
運が良かったね」
- ◆ 始
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「そっか。ありがとう」