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- ◆ 始
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「あっ……」
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そこでは、振り付けの練習をする鈴奈さんの姿が
あったけど、それだけではなくて。
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それに付き合うように同じ動きを踏む七海さんもいた。
- ◆ 始
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「……あれ? 七海さんまで?」
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授業が終わると同時に教室を出ていたから、
屋上に来ているんだろうと思っていたけど。
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七海さんまで踊っているのは、ちょっと予想外だった。
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というか、鈴奈さんより上手い気がするけど。
- ◆ 由香里
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「お兄さんがKOされた時も、こうしてふたりで
練習していたんだよ」
- ◆ 始
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「どうして、二人で?」
- ◆ 由香里
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「たまにあることらしいよ。七海先輩の方が
運動神経も良くて、覚えがいいからね」
- ◆ 由香里
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「ああやって、見本となる時もあるみたいだ」
- ◆ 始
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「そうだったのか」
- ◆ 由香里
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「まあ、鈴奈先輩は階段で転んでしまう
うっかりさんだからね」
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たしかに鈴奈さんは運動が苦手みたいだしな。
以前見た雑誌のインタビューとかでもそう答えていたし。
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その分、こうやって努力でカバーしているのか。
- ◆ 始
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「しかし、七海さんも付き合いがいいな」
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やっぱり仲間意識というか、友情を感じているんだろう。
そうでなければ、こんなことしないだろうし。
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しかし、それにしても……スタイルのいいふたりが
並んで踊っているのは絵になるなあ。
- ◆ 由香里
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「時間があまり取れないからか、着替える手間も
惜しんで、あの姿で練習しているんだ」
- ◆ 由香里
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「今までは男性の目がなかったからそれでも良かった
だろうけど、今後は考えて貰わないといけないかもね」
- ◆ 由香里
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「実際、いい目の保養になるだろう、お兄さん」
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まるで俺の内心を見透かしたように、
由香里がそっと耳元で囁いてくる。
- ◆ 始
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「うわっ。ちょ、ちょっと。何するんだよ!?」
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ふっとかかる吐息に、背筋がぞわっとした!
- ◆ 由香里
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「いやいや。目の前でそうも夢中になられると、
ちょっと妬いてしまって」